神奈川県川崎市の動物病院 だん動物病院

犬・猫の下痢がなかなか治らない|慢性下痢の原因・検査・治療について

「下痢が何週間も続いている」
「薬を飲むと良くなるけれど、やめるとまた下痢をする」
「元気や食欲はあるけれど、ずっと便が柔らかい」

このような症状でお困りではありませんか?

 

犬や猫にとって下痢は比較的よくみられる症状です。一時的な胃腸炎であれば数日で改善することもありますが、長期間続いたり、良くなったり悪くなったりを繰り返したりする場合には、さまざまな病気が隠れている可能性があります。

慢性下痢の診療で特に大切なのは、最初から一つの病気に決めつけるのではなく、考えられる原因を一つずつ除外していくことです。

今回は、犬・猫の慢性下痢について、当院での診断・治療の考え方を含めてご紹介します。

 

 

【慢性下痢とは】

一般的に、下痢が長期間(2週間以上)続いている状態や、繰り返し下痢を起こしている状態「慢性下痢」と呼びます。

慢性下痢では、単純な胃腸炎だけでなく、食事、寄生虫、感染症、腸の炎症、腫瘍など、さまざまな原因を考える必要があります。

 

また、

・体重が減ってきた

・食欲が落ちている

・嘔吐も繰り返している

・血便が続いている

・元気がなくなってきた

といった症状を伴っている場合には、より詳しい検査が必要になることがあります。

 

 

【原因】

慢性下痢を引き起こす原因は一つではありません。

 

代表的なものとして、

・寄生虫

・感染症

・食事に関連した腸症(食事アレルギー)

・炎症性腸症(IBD)

・腫瘍(消化管型リンパ腫など)

・膵臓など消化管以外の病気

・内分泌疾患

などがあります。

同じような下痢に見えても原因によって治療方法は異なります。

そのため、「下痢止めを飲んでも治らないから、もっと強い薬を使う」というのではなく、何が原因なのかを順番に調べていくことが非常に重要です。

 

 

【診断】

慢性下痢の診断では、「除外診断」が非常に重要になります。

除外診断とは、考えられる病気を検査や治療への反応を確認しながら一つずつ除外し、原因を絞り込んでいく方法です。

 

まずは身体検査に加えて、

・血液検査

・便検査

・レントゲン検査

・腹部超音波検査

・内視鏡:炎症性腸疾患(IBD)やリンパ腫などの診断に有効!

 

などを組み合わせ、全身状態や消化管に異常がないかを確認します。

慢性下痢は、一度の検査ですぐに原因が判明するとは限りません。

例えば、便検査で寄生虫が検出されなかったとしても、すべての寄生虫を完全に否定できるわけではありません。そのため、必要に応じて試験的な駆虫を行ったり、感染症を詳しく調べるための外注検査を行ったりすることもあります。

このように、「検査をする→原因を一つ除外する→次の可能性を調べる」ことを繰り返していくことが、慢性下痢の診断では大切です。

 

 

【内視鏡検査・生検】

慢性下痢の原因を最終的に診断するために重要となるのが、内視鏡検査・生検検査です。

「生検」とは、胃や腸から小さな組織を採取し、病理検査によって顕微鏡で細胞や組織の状態を詳しく調べる検査です。

特に炎症性の腸疾患と腫瘍では、血液検査や超音波検査だけでは区別が難しい場合があります。そのため、慢性下痢の最終的な診断には、生検による病理組織検査が必要になることがあります。

一方で、内視鏡検査には全身麻酔が必要であり、検査を行っても必ず原因が特定できるとは限りません。

また、生検を行う前にステロイドなどの治療を開始すると、腸の炎症や腫瘍の状態が変化し、その後の病理診断に影響する可能性があります。

そのため、症状や検査結果をみながら、「先に治療を行うのか」「生検による診断を優先するのか」を飼い主様と相談して決めていきます。

 

 

【治療】

慢性下痢では、原因によって治療方法が大きく異なります。

寄生虫が疑われれば駆虫薬、ビタミン欠乏があれば必要なビタミンの補充など、それぞれの原因に応じた治療を行います。

また、治療を行った際に症状が改善するかどうかも、原因を判断するための大切な情報になります。

そのため慢性下痢では、治療と診断を並行して進めていくことがあります。

 

大切なのは、いくつもの治療を一度に始めてしまわないことです。

複数の治療を同時に開始して症状が改善すると、「何が効いたのか」が分からなくなってしまうことがあります。

 

当院では、できる限り一つずつ原因を評価し、その子に合った治療を探していくことを大切にしています。

 

 

【食事療法】

慢性下痢では、食事療法も非常に重要です。

慢性的な腸症の中には、食事を変更することで症状が改善する「食物反応性腸症」があります。

この場合には、低アレルギー食など、その子の状態に合わせた療法食を2か月間続けて反応を確認します。

 

ここで重要なのが、決められた食事以外を与えないことです。

おやつ、お肉、人の食べ物などを途中で与えてしまうと、食事療法の効果を正確に判断できなくなる可能性があります。

つまり食事療法は単なる「治療」ではなく、下痢の原因を調べるための検査の一つでもあると考えてください。

 

 

【まとめ】

慢性下痢は、一度の検査ですぐに原因が分かるとは限りません。

検査 → 原因を一つずつ除外 → 治療 → 反応を確認 → 必要に応じて次の検査

というように、段階的に診断を進めていくことが非常に重要です。

そのため、診断や治療にある程度時間がかかることもあります。

 

当院では、最初から一つの病気に決めつけたり、むやみに治療薬を増やしたりするのではなく、一つずつ除外診断を行い、その子に合った治療方法を探していくことを大切にしています。

そして、食事療法などを行っても症状が改善しない場合には、内視鏡検査・生検まで含めて検討し、できる限り正確な診断につなげていきます。

 

「下痢がずっと治らない」
「薬をやめるとまた下痢をする」
「食事を変えても良くならない」
「何度も下痢を繰り返している」

このような症状でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。

 

長期的な診療になることもありますが、飼い主さまと一緒に一つずつ原因を整理し、その子にとって最善の治療方法を考えていきましょう。

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