犬・猫の慢性腎臓病について
犬や猫の慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が徐々に低下する進行性の病気です。
腎臓は体内の老廃物を排出し、体液バランスを調整する重要な役割を果たしていますが、この機能が損なわれると、体内に毒素が蓄積し、さまざまな健康問題を引き起こします。特に高齢の犬や猫でよく見られる病気です。
腎不全は進行性の病気であり、生涯お付き合いしていく病気になります。
【症状】
慢性腎臓病は初期段階では目立った症状が現れないことが多いですが、病気が進行すると以下のような症状が見られます:
• 多飲多尿:
水をたくさん飲んだり、尿の量が増えたりします。体重1kgに対して80-100mlの水を飲んでいると飲みすぎになります。
(例)体重5kgの子の場合、1日400-500mlの水を飲んでいると異常所見となります。
• 食欲不振:ご飯をあまり食べなくなる。(食べムラ)
• 体重減少:体重が徐々に痩せてくる。
• 嘔吐や下痢:胃腸の調子が悪くなる。
• 被毛の艶がなくなる:毛がパサつき、元気がなく見える。
• 口臭:尿毒症の進行によりアンモニアのような口臭がする。
【診断】
慢性腎臓病の診断には、以下の検査が行われます:
• 血液検査:腎臓パネル(BUN,Cre,P,Ca,NaKCl)
⇨腎臓機能の75%以上が障害された時に異常値を示します。特にCre(クレアチニン)は腎不全の進行度を評価する重要な役割を果たします。
• SDMA:
⇨腎不全を早期に発見マーカーです。(腎臓機能の40%が障害された時に高値を示します)
• 尿検査:尿比重や尿タンパク量を確認します。
• 血圧:高血圧の有無をチェックします。
• 超音波検査・X線検査:腎臓の形態や大きさをチェック。
【腎臓のステージ分類:IRIS】
腎不全の進行度を判断するために、国際的に「IRIS(アイリス)分類」という基準が使われています。これは血液検査での「クレアチニン」や「SDMA」の値、尿検査での「尿タンパク」、「血圧」などを組み合わせて評価します
・猫 猫 IRISステージ
【治療】
慢性腎臓病は完治が難しい病気ですが、適切な治療と管理により進行を遅らせることができます。
1. 食事療法
・腎臓病専用の療法食に切り替えることで、腎臓への負担を軽減。
・低タンパク質・低リンのフードが推奨されます。
2. 薬物療法
・ 高血圧をコントロールする薬や、尿毒素を減らすための薬を使用します。
・胃腸の症状を和らげる薬も処方されることがあります。
3. 点滴治療
・脱水を防ぐために皮下点滴を行うことが多いです。
4. 定期的な検査とモニタリング
・ 病状の進行を確認するために定期的な血液検査・尿検査を実施。
【飼い主ができること】
• 早期発見:高齢の子は定期的な健康診断を受けることが重要です。
• 水分補給:常に新鮮な水を用意し、脱水を防ぎます。
• 食事管理:獣医師の指導のもとで適切なフードを与えましょう。
• 症状の観察:日々の健康状態を観察し、異変があれば早めに受診してください。
【まとめ】
慢性腎臓病は早期発見と適切な管理がポイントです。
症状が出た頃にはすでに病気が進行していることが多いため、予防的な健康診断が特に重要です。愛犬や愛猫が健康に長生きできるよう、飼い主として注意深くケアしていきましょう。