尿管結石
【尿管結石とは?】
尿管結石(にょうかんけっせき)は、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ細い管(尿管)に結石が詰まってしまう病気です。
尿管は非常に細く、犬や猫では1mm前後しかありません。そのため、腎臓でできた小さな結石でも、尿管に詰まると尿の流れが止まり、腎臓に圧力がかかります。
特に猫では両側性尿管結石が25%も存在し、そのうち10%は膀胱結石と関連しています。結石の多くはシュウ酸カルシウムでできています。
【特徴と危険性】
・両側の尿管が完全閉塞、または重度の部分閉塞になると、腎後性の高窒素血症(急性腎不全)を引き起こします。
・3〜6日以内に閉塞が解消されなければ、生命に関わる尿毒症に進行する可能性があります。
・片側の腎臓が正常に機能していれば、閉塞があっても尿毒症の症状は現れません。
このため、尿管結石は緊急を要する病気であり、早期発見と治療が腎臓を守るカギです。
【症状】
・食欲が落ちる
・元気がない
・嘔吐
・排尿回数や排尿姿勢の変化
・腰やお腹を触られるのを嫌がる
両側の尿管が詰まると、尿が全く出ず、ぐったりする、嘔吐やよだれが多くなるなど命に関わる症状が現れます。
【原因】
尿管結石は、多くの場合、腎臓でできた結石が尿管に流れ出て詰まることで発生します。
原因としては以下が考えられます。
・体質・遺伝:特定の犬種・猫種は結石ができやすい
・食事:ミネラルバランスの偏りや水分不足
・尿のpH:酸性・アルカリ性に偏ると結晶化しやすい
・感染や炎症:尿路感染で尿成分が変化し結石ができやすくなる
【診断】
尿管結石の診断は、画像検査が中心です。
・X線検査:
多くの結石を確認できますが、種類によっては写らないこともあります。
⇨X線検査により、腎臓・尿管・膀胱・尿道のどの部位に結石があるのか判断します。

・超音波検査(エコー):
尿管や腎臓内の尿の流れ、水腎症の有無を確認できます。
⇨腎盂の拡張を認める場合は、尿管閉塞を強く疑う所見となります。

・血液検査:
全身状態の把握をします。特に腎数値・電解質バランスを評価し、緊急性を評価します。
・尿検査:
結晶や細菌の有無、pHを確認し結石の種類を推定します。
【治療】
尿管結石は自然に出ることが難しく、早期の対応が重要です。
●内科的治療
・ごく小さい結石で尿の流れが保たれている場合に限り、点滴や利尿剤で自然排出を促すことがあります。
・尿の流れが悪い場合や腎機能が低下している場合は外科的治療が必要です。
⇨特に全身状態が悪い場合は、まずは内科治療を行い全身状態の改善を試みます。
●外科的治療(当院でも対応可能):尿管結石の位置により手術を選択します。
当院では、結石の位置や大きさ、腎機能に合わせた手術・処置が可能ですので、緊急の場合も対応できます。
・尿管切開術:尿管を切開して結石を取り除きます。
・尿管ステントやSUBシステム:尿管内にチューブを設置して尿の流れを確保し、腎機能を守ります。
・尿管・膀胱吻合術
【予後】
・尿管閉塞から早期に治療すれば腎機能回復可能
・片側尿管を1、2、4、6週間完全閉塞させた場合のGFR(腎血流量)の回復率
⇨1週間後:68%、2週間後:38.7%、4週間後:9.8%、6週間後:2%の回復率
つまり、閉塞が長引くほど腎機能の回復が難しくなるため、早期発見と対応が非常に重要です。
【再発予防と日常管理】
尿管結石は再発しやすいため、長期管理が大切です。
・療法食の継続:結石の再形成を防ぐ専用フード
・十分な水分摂取:ウェットフードの利用や水飲み場の増設
・定期検査:超音波・血液検査で腎臓・尿路の状態をチェック
・早期発見:食欲低下や嘔吐など小さな変化も見逃さない
【まとめ】
尿管結石は、緊急性が高く、放置すると腎臓にダメージが蓄積する可能性がある重大な病気です。
「元気がない」「食欲が落ちた」「排尿の様子が変」などのサインが見られたら、すぐに動物病院で検査を受けることが重要です。
当院では、緊急対応を含めた手術やSUBシステムによる治療が可能です。
定期的な健康チェックと日常の観察で、愛犬・愛猫の腎臓と尿路の健康を守りましょう。

