神奈川県川崎市の動物病院 だん動物病院

猫のユリ中毒について

2025-10-06

美しく香りもよいユリの花ですが、猫にとっては命に関わる危険な植物です。たったの葉2枚や花びらの一部の誤飲ですら死に至らしめる可能性があり、植物全体(花粉、葉、雌しべ、花弁)もまた毒になります。

特に春から初夏、贈り物や仏花などでユリを飾る機会が増える時期は、注意が必要です。

 

 

【どんな植物が危険?】

ユリ科・ユリ属に含まれる多くの花が危険です。
代表的なものは、カサブランカ、テッポウユリ、タイガーリリー、スカシユリ、ヤマユリなど。
花束や仏花、鉢植えに含まれていることも多く、花、葉、茎、花粉、水すべてが中毒の原因になります。
犬では大量に食べても軽い胃腸炎程度で済むことが多いですが、猫ではほとんどが中毒症状を発症します。

 

 

【中毒の特徴と症状】

ユリ中毒では、**腎臓の尿細管が壊れてしまう「急性尿細管壊死」**を起こします。

 

摂取後の経過は次のように進行します。

・2〜4時間以内:突然の嘔吐が見られるが、いったん落ち着く。

・12〜24時間後:尿が出なくなる(無尿性腎不全)。脱水も進行。

・2日目まで:嘔吐が続き、元気や食欲がなくなる。

・4〜7日目:腎臓が完全に機能しなくなり、死亡に至るケースも。

初期症状は軽く見えても、時間が経つにつれて腎臓が壊れていくのがこの中毒の怖いところです。

 

 

【診断】

血液検査で腎臓の数値(クレアチニン:Cre、尿素窒素:BUNなど)が上昇します。
ただし、これらの値が上がるまでには時間がかかるため、「ユリを食べたかもしれない」時点で受診することが重要です。

 

 

【治療】

① 消化管洗浄(摂取直後)

ユリを食べてから短時間(数時間以内)で来院した場合は、催吐処置・活性炭の投与・胃洗浄などで体内に吸収される前に排出します。

② 輸液療法(2〜3日間)

無尿になる前に、早期の輸液治療を開始することが最も重要です。
できるだけ早く(理想は24時間以内)に点滴を始めることが望ましい。

 

 

【予後】

ユリ中毒の予後は、どれだけ早期に対応できたが重要となります。

早期に対応・治療を開始できれば、腎不全を防げる可能性が高いです。

症状が進行してからでは腎臓の回復が難しく、命を落とすこともあります。

 

 

【予防が何より大切!】

・猫のいる家庭では、ユリを置かないようにしましょう。。

・花瓶の水にも毒が含まれるため、猫が飲まないように注意。

「少しくらいなら大丈夫」という油断が、取り返しのつかない結果を招くことがあります。

 

 

【まとめ】

・猫にとってユリは極めて毒性の強い植物です。

・ごく微量でも急性腎不全を起こす可能性があります。

・摂取後48時間以内の治療が生死を分けるため、食べた可能性がある場合はすぐに動物病院へ連絡をください。

・ユリ科の植物を家に置かないことが最善の予防策です。

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