神奈川県川崎市の動物病院 だん動物病院

犬・猫の予防歯科について

2025-09-21

【歯周病はとても身近な病気】

犬や猫の多くは3歳を過ぎると、何らかの歯周病を抱えているといわれています。歯周病は「歯ぐきが赤い」「口臭が強い」といった初期症状から始まり、進行すると歯が抜けたり、顎の骨にまで影響を与える深刻な病気です。さらに、口腔内の細菌が血流にのって全身に広がることで、心臓や腎臓などの臓器に悪影響を与えることもあります。

この歯周病を予防・管理するために必要なのが「予防歯科」です。

 

 

【歯周病について】

歯周病の原因は「歯垢(プラーク)」です。

「歯石が原因で歯周病になる」と思われがちですが、実はこれは誤解です。

歯周病の原因は、歯の表面に付着する歯垢(プラーク)です。歯垢は細菌の塊で、放置すると数日で歯石に変化します。歯石中細菌の活動はほとんどなく、歯石の表面がザラザラしているため新しい歯垢が付きやすい環境を作ります。つまり、歯石は「二次的に歯周病を悪化させる要因」なのです。

そのため、「歯石をとった=歯周病が治った」わけではなく、最も大切なのは日々の歯垢コントロールなのです。

 

 

【無麻酔での歯石除去】

近年、一部で「無麻酔での歯石取り」が行われていますが、これはとても危険な行為です。

当院では、無麻酔での歯石除去は推奨しておりません。

 

(無麻酔での歯石除去が危険な理由)

1、 外傷のリスク

スケーラーや鉗子は先端が鋭利で、犬や猫が少しでも動けば歯肉や舌、口腔粘膜を傷つけてしまいます。実際に歯を折ってしまったり、歯肉を気付付けてしまい出血する事故も報告されています。

2、 歯周炎の治療にはならない

歯周炎がある場合、炎症を起こしている歯肉の下(歯周ポケット)に歯垢や歯石がたまっています。無麻酔での処置ではポケットの奥にアプローチできないため、肝心の原因はそのまま残ってしまい、むしろ炎症を悪化させることがあります。

3、痛みと恐怖を与える

炎症がある歯肉に器具が当たると出血や強い痛みを伴います。犬や猫は強い恐怖を覚え、以後の家庭での歯みがきを嫌がる原因にもなります。

 

 

【動物病院で行う正しい処置】

動物病院でのスケーリング(歯石除去)は、全身麻酔下で行うのが原則です。
麻酔をかけることで動物が動かず安全に処置できるだけでなく、歯周ポケットの奥深くまで洗浄・清掃が可能になります。また、歯面をポリッシング(研磨)することで、歯垢が再びつきにくい環境を整えることができます。

麻酔にリスクがあるのでは?と心配される方もいますが、事前の検査を行うことで安全性を高め、必要に応じて低侵襲な麻酔管理を行います。

 

一番の予防は「毎日の歯みがき」

歯周炎の原因は「歯垢」であり、それは数時間で形成されます。そのため、定期的に歯垢を除去すること=歯みがき習慣が最も重要です。

 

(歯みがきのコツ)

1、子犬・子猫の頃から少しずつ慣らす

2、指で歯ぐきを触る → ガーゼで拭く → 歯ブラシへとステップアップ

3、ペット用の歯ブラシと歯みがきペーストを使用

4、嫌がる前に短時間で終え、必ず褒める

歯みがきが難しい場合は補助ケアもあります。

・デンタルガムやデンタルフード

・水に混ぜるタイプのデンタルケア製品

・サプリメント

ただし、これらはあくまで補助であり、やはり歯みがきに勝る予防はありません。

 

 

【まとめ】

犬や猫の口腔ケアは、健康寿命を大きく左右します。

・歯周病の原因は「歯石」ではなく「歯垢」

・無麻酔での歯石除去は危険で治療にもならない

・動物病院では麻酔下で安全に処置し、歯面を整えることが重要

・そして最も大切なのは、飼い主さんによる毎日の歯みがき

予防歯科は「病気になってから治す」医療ではなく、「病気を防ぎ、快適な生活を守る」医療です。

当院では、全身麻酔下での歯科処置が可能です。

「歯みがきの仕方が分からない」「口臭が気になる」など、気になることがあれば是非お気軽にご相談ください。

ネット予約