重症熱性血小板減少症症候群(SFTS)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は近年ニュースなどでも取り上げられることが多く、人や犬・猫にとって非常に危険な感染症です。SFTSは マダニが媒介するウイルス感染症 で、日本各地で発生が報告されています。特にここ1-2か月では関東でも発生報告があります。今回はSFTSの特徴と怖さ、そして飼い主様と動物を守るために欠かせない ノミ・ダニ予防の重要性 について、分かりやすくご紹介します。
●SFTSとはどんな病気?
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、SFTSウイルス に感染することで発症します。
このウイルスは マダニ を介して広がり、咬まれることで体内に侵入します。
人が感染した場合の致死率は10〜30%とされ、猫では約60%、犬でも約44%と報告されており、非常に危険な感染症です。
症状は発熱・食欲不振・嘔吐・下痢などが多く、重症化すると出血や意識障害が見られることもあります。犬や猫でも同様に感染が確認されており、発熱や元気消失、消化器症状を示すことがあります。
特に猫は重症化しやすく、外に出る猫で発熱や黄疸が見られる場合は要注意 です。
そのような症状がある猫を連れて来院される際は、必ず受付でスタッフに一言お声がけください。感染拡大を防ぐため、防護服の着用など必要な対策を取らせていただきます。
残念ながら、動物に対しても現在は 有効な治療法が確立されていません。
だからこそ、「予防」が最も大切なのです。
SFTSの怖い点は、
- ダニに咬まれて直接感染する
- 感染した犬や猫から人へ感染する可能性がある
という二重のリスクがあることです。
特に、猫はSFTSにかかると重症化しやすく、看病していた飼い主様が感染してしまう事例も報告されています。
●マダニはどこにいる?
マダニは山や草むらだけでなく、街中の公園や河川敷、ちょっとした草むらにも潜んでいます。春から秋にかけて活動が盛んですが、近年は冬でも見かけることがあり、一年を通して油断できません。
一度咬みつくと皮膚にしっかり食いつき、数日間吸血を続けます。散歩のときに気づかないうちに寄生してしまうこともあります。
SFTSに対する ワクチンや特効薬は存在しません。
だからこそ大切なのが、ノミ・ダニの寄生を予防すること です。
現在は、月に一度飲ませるタイプや、皮膚につけるスポットタイプなど生活スタイルに合わせて使える予防薬が揃っています。
- 毎月しっかり予防を続ける
- 外に出る犬・猫は通年で予防する
- 草むらや山に行く習慣がある場合は特に注意する
こうした工夫で、SFTSだけでなく他のダニ媒介感染症やノミによる皮膚病も予防できます。
●飼い主様ができること
- 愛犬・愛猫に合った予防薬を使う
→ 病院で体格や体調に合わせたものを選びましょう。 - 散歩や外出の後は体をチェックする
→ 毛の間や耳、足先などは特に要注意です。 - 見つけても自分で無理に取らない
→ ダニを無理に引き抜くと頭が皮膚に残り、感染リスクが高まります。必ず病院にご相談ください。 - 屋外環境にも注意
→ 草むらに入りすぎない、庭の雑草を整えるなどでダニの生息環境を減らせます。
【まとめ】
SFTSは、人にも犬・猫にも感染する非常に危険な病気です。
残念ながら有効な治療法やワクチンはなく、唯一の対策は 「ノミ・ダニ予防を徹底すること」 です。
「うちは室内飼いだから大丈夫」と思われがちですが、実際には飼い主様が外から持ち込んだり、ベランダや近所の草むらで感染する可能性もあります。
愛するペットを守ることは、同時にご家族を守ることにもつながります。
毎月の予防を習慣にして、安心して動物たちと暮らせる環境を整えていきましょう。
当院では、体格や生活スタイルに合わせた予防薬をご提案しています。お気軽にご相談ください。